2019/03/27 08:00


清野忠一さん(りんご農家・森林組合員)

 

 りんご農家の忠一さんは、とても精力的。早くから農協出荷に頼らない販路を開拓し、それに合わせた栽培を行ってきました。先祖が開拓した農地と植えたりんごの木を守り続けています。

 そんな忠一さんのお宅には、古い道具が立派な土蔵の中にたくさん残っています。きちんと建てられた土蔵の中は、湿気と温度が通年安定していて驚くほどの保存状態が保たれていました。

 見せていただいた「はけご」には忠一さんの屋号である「山十」の文字が墨で記してあります。素材は藁なのですが、使っているのは「みご」だといいます。「みごっていうのは藁の芯っだな」と忠一さん。稈心と書いて「みご」。一本の藁をまわりから剥いていくと、葉の部分が取れて芯(茎)が残ります。それがみごで、馴染み深い言い方だと「わらしべ」です。みごは細く丈夫で、すらっと綺麗な見た目。その綺麗なみごだけを集めて作ったのが屋号の入った「はけご」なんです。

 みごは細いので、藁で作るより材料が必要で、作る時間もずっと掛かります。そうして出来た「はけご」は見た目も良く、毛羽立ちも少ないものになります。買い物に行ったり、人のお宅にお邪魔するときに持って行く、よそ行き用の「はけご」がみごで作った「はけご」だと聞いて、私は目から鱗。そんな使い分けがあったのですね。毛羽立ちが少ないので、着物を汚すこともなかったんだそうです。

 一方、外側の葉も含めた藁で作ったのが、農作業用の「はけご」です。忠一さんは、まず作りが全く違うからすぐにわかるんだとか。よそ行きの「はけご」はとても丁寧に作られていて、端の処理もしっかりしてある。確かにそう言われて見ると、繊維の間隔から細かい紐の作りまで全然違うのです。丁寧に作り込んで中央に屋号を冠したはけごは、今で言うタウンユースのおしゃれなもの、そして自家製のオーダーメイドということになるのでしょうか。着物に色んな用途、種類があるように「はけご」にもそれがあることを知って、いたく腑に落ちた私でした。

 そんな話を進めている中、忠一さんが森林組合員になっている話題になり、西村山森林組合(山形県村山地区の西部)では祭事で箸作りのワークショップを行っているとのこと!なんですか、その面白そうな話は!とさっそく食い付いた私に、その場で箸作りを教えてくれました。

 杉の小さな角材にカンナ掛けをするのですが、少し慣れれば削るのが楽しい楽しい。何よりきちんとお箸の形になっていくのが面白い。出来たお箸を手に取ると思わず子供のような笑顔になってしまいます。「今度東京で出店するんですけど、この箸作りってみんな楽しいと思うんです・・・」という私に「うんうん、やり方教えるからぜひやってきなよ!」と太っ腹な忠一さん。

 ということで!!突然ですが、来月4/6(土)、7(日)に東京都品川区の「運河まつり」にて箸作りワークショップを行います!もちろん「はけご」もお持ちいたします。はけごの実物に触れていただく機会となれば大変嬉しく思います。何よりお読みいただいている方に直接お会いできたら最高です。ぜひお立ち寄りくださいませ。

鬼武

 

運河まつり(出店名:Sui)

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